R18短編小説

都会で揺れた夏、義母と先輩の記憶

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執筆:編集部(原記事に基づく再編集) 編集部による品質基準審査済み
都会で揺れた夏、義母と先輩の記憶

祖父の援助を受けて大学へ進んだ私は、都会での暮らしを始めた。アルバイトはしなくていい。ただ、しっかり学んでこい。祖父はそう言い、私はその言葉を背に、講義が終わるたびにアパートへ戻っては復習と予習を繰り返す、少し味気ない毎日を送っていた。

退屈を埋めたくて、高校時代に少しだけ続けていたテニス同好会に顔を出したのは、そんな頃だった。正直なところ、女の子と仲良くなれたらいい、という下心もあった。だが現実は思ったより素っ気なく、集まっている女の子たちは皆、すでに恋人がいる様子で、こちらの期待はあっさり外れた。それでも、居心地の悪さよりも暇のほうが勝って、私はそのまま続けることにした。

初めて里帰りしたのは、その年の夏休みだった。家に入ると、まだ幼い義妹が待ち構えていて、私の姿を見るなりぴたりと離れなくなった。

「お兄ちゃんが帰って来るの、ずっと待ってたの。昨日なんて、うれしくて眠れなかったのよ」

そう言われて、私は思わず笑ってしまった。五歳の子どもらしい遠慮のない甘え方が、妙に胸に残った。

その日の夕方、祖父の家へ向かい、大学生活のことを報告した。講義の様子、同好会で体を動かしていること、都会での暮らしに少しずつ慣れてきたこと。祖父は満足そうにうなずき、夕食には寿司の出前を取ってくれた。義母と義妹も呼ばれ、久しぶりに家族らしいにぎやかな食卓になった。

義母は、義妹が保育園に通うようになったこともあり、祖父の会社で事務の手伝いを始めていた。私は日中ひとりで過ごすことが多く、最初は手持ちぶさたで仕方がなかった。そんな様子を見かねた祖父が、将来のためになるだろうと、会社の製造の手伝いをさせてくれるようになった。義母と一緒に出かけ、昼は彼女の作ってくれた弁当を食べる。仕事を終えて帰れば夕食があり、夜は義妹と風呂に入る。思い返せば、あの夏休みは思いのほか充実していた。

ただひとつ、心に引っかかるものがあった。義母に近づくと、彼女はさりげなく距離を取る。そのたびに、私は少しだけ寂しくなった。あのやわらかな空気の向こう側に、簡単には踏み込めない壁があるようで、子どものように甘えたい気持ちを持て余していた。

翌年、二十歳になった夏休みも、私は同じように里帰りした。義妹は六歳になっていて、前よりもずっと口が達者になっていた。ある日、彼女は得意げな顔でこんなことを言った。

「お兄ちゃん、私ね、お友達ができたの。その子と、大人になったらお嫁さんになるって約束したの。だから、もうお風呂は一緒に入れないの」

あまりに子どもらしい宣言に、私は苦笑するしかなかった。だが数日後、義妹はころっと言うことを変えた。

「やっぱり、お兄ちゃんと入る。お友達には内緒ね。私、お兄ちゃんが大好きなの」

その素直さに、私はまた気持ちをほどかれた。

祖父の会社が休みに入る前日、高校時代の友人から居酒屋に誘われた。懐かしい顔ぶれの中に、二人目の相手だった紗希がいた。話を聞くと、彼女は高校卒業後、そのとき付き合っていた男と結婚したらしい。だが夫は長距離トラックの運転手で、月の半分ほど家を空ける。寂しさを紛らわせるため、たまに友人たちと飲みに出ているのだという。

居酒屋では昔話で盛り上がり、そのまま近くのカラオケへ流れた。歌っているうちに一人、また一人と帰っていき、気づけば紗希と私だけが残っていた。

紗希は、少しふくよかで、存在感のある胸元が目を引く、愛嬌のある女の子だった。笑うと親しみやすく、近くにいると妙に安心する。そんな彼女が、ぽつりと言った。

「私、明日はパートがお休みなの。帰っても旦那さんいないし。もう少し一緒にいて」

その言葉に押されるように、私は終電を逃した。十一時を過ぎたころ、さすがに帰ろうとすると、紗希は少しだけ視線を上げて、いたずらっぽく首をかしげた。

「彰、ホテル行こうか。私のこと、嫌い?」

しばらく女性と関係を持っていなかったこともあり、私はその誘いを断れなかった。紗希は泊まる気でいるらしく、私は義母に連絡して、友人の家に泊まると嘘をついた。

ホテルに入ると、紗希は昔話を始めた。高校時代、四人の男と関係を持ったこと。そのうち二人には、半ば無理やり押し切られたようなものだったこと。そういう話を、彼女は妙にあっけらかんと語る。

「二年のとき、一つ上の先輩に呼ばれて家へ行ったの。そしたら、もう一人先輩がいて、いきなり服を脱がされて……ああいうの、半分は押し倒された感じだったかな。あとで愛に話したら、『紗希、ガードがゆるいのよ』って笑われちゃって」

そう言ってから、彼女は少しだけ照れた。

「それで、愛から彰のことを聞いて、試してみたくなったの。エヘヘ」

三年生になるころには、別の高校に通う今の夫から交際を申し込まれ、毎日のように会ううちに卒業後の将来を夢見るようになったという。大型免許を取って、長距離を走って、お前と幸せに暮らす。そう言われて、結婚を決めたのだと。

「先にシャワー使っていいよ」

そう言われて浴室へ向かい、汗を流して戻ると、紗希はすでに準備を整えていた。ベッドに腰を下ろした彼女は、タオル越しにこちらを見て、少しだけ息を弾ませる。

「さあ、始めようか。彰のは大きいから、楽しみ。ちょっとは上手になった?」

紗希はタオルを外し、豊かな胸をあらわにした。柔らかく、手のひらに吸い付くような感触だった。彼女は恥ずかしそうにしながらも、どこか堂々としていて、こちらの視線を受け止めることに慣れているようでもあった。

「気持ちいい。旦那とは、もう十日もしてないの」

そう言って目を細める紗希に触れていると、彼女はすぐに熱を帯びていった。耳元で小さく吐息を漏らし、私の手を求めるように身体を寄せてくる。彼女の反応は素直で、少し刺激を与えるだけで、たちまち表情が変わった。

「ねえ、彰。中に指、入れて。お願い」

求められるままに触れると、紗希は小さく身を震わせた。濡れた熱が指先にまとわりつき、彼女はそれを恥ずかしがるどころか、むしろ楽しんでいるようだった。

「私、興奮するとすごく出ちゃうの。エヘヘ」

彼女は笑いながらそう言い、私が少し強めに動かすと、ついに身体を反らせた。

「あっ……だめ、イッちゃう……」

そのまま何度も波が来た。紗希は大きく息をつき、頬を赤く染め、ベッドの上でしばらく動けなくなった。

続いて彼女は、私をベッドに寝かせると、今度は自分が主導権を握った。慣れた手つきでこちらを受け入れ、深く口づけを交わしながら、ためらいなく身体を重ねてくる。私は彼女の柔らかな体温に包まれ、あっという間に理性を失っていった。

「彰、これ、誰にも言わないでね。旦那に知られたら、私、本当に困るから」

そう釘を刺されると、私はうなずくしかなかった。紗希は悪びれた様子もなく、むしろ少し楽しそうに微笑んでいた。

「私、彰が三人目。男の人に誘われると、断れないのよね」

その言葉に、私は妙な気持ちになった。軽いのか、寂しいのか、それともただ流されやすいだけなのか。どれとも決めきれないまま、朝までに何度も彼女に求められ、私は久しぶりに満たされた気分でホテルを出た。

別れ際、紗希は振り返って言った。

「帰ってきたら連絡して。もう一回、会いたいから」

私は曖昧に笑い、バスで家へ戻った。

だが、その年の秋、義母の両親が交通事故で突然亡くなった。私は義母の両親とは、父が再婚する際に一度会っただけだったが、義母と義妹の落ち込み方は見ていてつらいほどだった。葬儀のあいだ、二人はずっと泣いていた。私はただ、そのそばにいて、抱きしめることしかできなかった。

「お兄ちゃん、ありがとう。もう大丈夫だから、少し寝て」

義母はそう気づかってくれたが、私は眠れなかった。目を閉じれば、泣き疲れた二人の顔が浮かぶ。結局、その夜も朝まで起きていた。

大学三年のゴールデンウィーク前、テニス同好会の飲み会があった。十五人ほど集まり、そのうち十人は女の子だった。そこで目を引いたのが、一年先輩の美人で、すらりとした体つきの女性だった。乾杯のあと、彼女は勢いよく酒を飲み、案の定、終盤にはかなり酔ってしまった。

介抱役になった私は、トイレへ連れて行き、吐かせ、少し落ち着くまで居酒屋で休ませてもらった。それでも顔の赤みが引かなかったので、タクシーで彼女の部屋まで送ることにした。

ワンルームに着いてベッドへ寝かせると、スカートが腰までずり上がり、パンスト越しに下着の形がはっきりわかった。私は思わず、ほんの少しだけ距離を詰めてしまった。

そのとき、先輩が水を求めた。冷蔵庫からペットボトルを取り出して渡すと、彼女はごくごくと飲み干し、やがて少し楽になった様子でベッドに横になった。

「ゴメンね。もう大丈夫。帰ってもいいよ」

そう言われたのに、私はなぜかすぐには帰れなかった。すると先輩は、少し身体を起こして、静かな声で話し始めた。

「私、三年付き合った彼氏に振られたの。それで今日は、ちょっとやけになって飲みすぎたのよ。送ってくれてありがとう。彰くんって、優しいのね。変な男だったら、具合が悪いのをいいことに無理やり何かされたかもしれないのに」

だいぶ顔色が戻った彼女は、そんなふうに笑った。

「先輩は美人だから、すぐ次の相手が見つかりますよ」

私がそう言うと、彼女はうれしそうに目を細めた。

「彰くん、彼女はいるの?」

私は、いませんと答えたあと、片思いの相手がいるとだけ伝えた。義母のことを思い浮かべながらの返事だった。

「へえ。そうなんだ。その人、幸せね。そんなふうに思われて」

先輩はそう言ってから、シャワーを浴びるために席を外した。私は冷蔵庫のビールを一本飲みながら、なぜ帰してもらえないのか不思議に思っていた。

やがてパジャマ姿で戻ってきた先輩は、水をひと口飲んでから、少しだけ寂しそうに言った。

「今日、泊まっていく? 一人でいるの、なんだか嫌なの。お願い」

断れるはずがなかった。私はシャワーを借りて浴び、期待と緊張が入り混じったまま部屋へ戻った。

ベッドには、すでに先輩が横になっていた。

「彰くん、私のこと嫌い? 嫌じゃないなら、隣に寝ていいよ」

そう言われて、私は隣へ入った。先輩は少しだけ間を置いてから、私の顔を見上げる。

「今日だけ、私の彼氏になって。お願い」

その一言で、何かが決まった気がした。私は彼女のパジャマのボタンを外し、唇を重ねた。上着を脱がすと、すらりとした身体の輪郭と、控えめな胸があらわになった。華奢なのに、触れると意外なほどやわらかい。

先輩は少し乱暴にされるのが好きだと、照れくさそうに言った。私はその言葉に背中を押されるように、彼女の身体を確かめていった。彼女は私の首に腕を回し、息を弾ませながら、もっと、とねだった。

やがて先輩は、私の手を導くようにして、自分の熱を求めた。普段はきれいに着飾っている美人が、こんなふうに乱れていくのが信じられず、私は何度も目を見張った。

「彰くん、上手ね。女の子の扱いに慣れてるの?」

そう言われて、私は答えに詰まった。慣れているわけではない。ただ、相手が求めるものを見逃したくなかっただけだ。

先輩は次第に呼吸を荒くし、ついには身体を震わせて声を漏らした。ベッドの上で大きく息をついた彼女は、今度は私を受け入れるように脚を開き、少しだけ顔をこわばらせた。

「最初は優しくして。こんなに大きいの、入れたことないから」

私は慎重に距離を詰めた。先輩の中は熱く、濡れていて、驚くほどすんなりと受け入れてくれた。けれど奥へ進むたび、彼女は小さく息を呑み、痛みと快感の境目で揺れているようだった。

「だめ、そこは……深い……壊れちゃう……」

そう言いながらも、先輩は逃げなかった。むしろ私の肩をつかみ、離れないようにしていた。やがて彼女は大きく声を上げ、身体を震わせながら達していった。

私も限界に近づいたころ、先輩は静かにうなずいた。

「中に出していいよ。彼氏とは、コンドームが嫌で、ピルを飲んでるから」

その言葉に背中を押され、私は彼女の中へ身を預けた。美人の先輩の中に自分の熱を残すことが、妙に現実離れしていて、同時にひどく生々しかった。

「男の人って、そういうの好きよね」

そう言って微笑んだ先輩は、そのあとも何度か私を求め、私もそれに応えた。夜が更けるにつれ、部屋の空気は甘く重くなり、外の静けさとは別世界のようだった。

だが、その関係が続くことはなかった。先輩が彼氏と別れたことが周囲に知られると、すぐに何人もの男が彼女に近づいた。その中から、先輩は気に入った相手を選び、自然な流れでそちらへ行ってしまったのだ。

「彰くんと付き合ったら、あなたのせいで私のほうが持たなくなりそう。ガバガバになっちゃうかも」

そう笑って言われたとき、私は返す言葉を失った。あの夜はたしかに特別だったが、先輩にとっては、そのうちのひとつに過ぎなかったのかもしれない。

やがて先輩は卒業し、私も大学四年生になった。あの頃の出来事は、どれも鮮やかで、少しだけ苦い。都会での暮らし、義母と義妹のいる家、紗希の湿った夜、そして美人の先輩の部屋で過ごした一晩。振り返れば、どれも若さの勢いに押されていたようでいて、どこかで誰かの寂しさに触れていた気がする。

その記憶を胸の奥にしまいながら、私は次の一年へ進んでいった。

この物語の余韻

都会で学びながら、私はいくつもの人の温度に触れた。義母への淡い思い、紗希の孤独、先輩の寂しさ。それぞれの夜は短かったが、私には長く残った。

あの頃の私は、まだ何もわかっていなかったのだと思う。けれど、わからないまま誰かに近づき、傷つき、揺れながら進んでいくしかなかった。そういう時間が、大学生活の輪郭を少しずつ作っていった。

そして私は、あの一連の出来事を、今もひとつの季節の記憶として思い出す。甘くて、気まずくて、少し切ない。そんな夏と秋の重なりだった。

静かな朝の部屋で余韻に沈む二人の空気感
最終更新:

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