R18短編小説

夏休みだけセクキャバで働く彼女を見た夜

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執筆:編集部(原記事に基づく再編集) 編集部による品質基準審査済み

俺は二十歳の大学生、隼人。付き合って半年になる彼女がいる。名前は澪。俺と同い年で、別の大学に通っている。真面目で、少し控えめで、それでいて妙に惹きつけられる子だった。

出会いはコンパだった。正直、俺はそういう場が得意じゃない。会話も上手くないし、盛り上げ役にもなれない。人数合わせで呼ばれたようなものだったし、最初から自信なんてなかった。澪も、ちょうど長く付き合っていた彼氏と別れたばかりで、気分転換のつもりで来ていたらしい。

そんな二人が、なぜか意気投合した。恋愛って、ほんとうに拍子抜けするほど簡単に始まることがある。気がつけば連絡を取り合うようになり、思ったより早く付き合うことになっていた。

ただ、澪は俺にとって初めての彼女だった。嬉しいはずなのに、どこか落ち着かない。彼氏と別れてすぐ俺に来たようにも見えてしまって、周囲に大々的には言えなかった。俺自身も、まだその関係をうまく受け止め切れていなかったのかもしれない。

澪は可愛かった。細身なのに、触れると柔らかい。抱きしめると、華奢な体の奥にちゃんと温かさがある。恋人らしいことがしたいというより、くっついていたい、甘えていたい、そんな空気を持っている子だった。キスをして、腕を絡めて、胸元に顔を寄せる。そういう時間が、澪は好きだった。

付き合って一か月ほどで、俺はようやく童貞を卒業した。とはいえ、その後も頻繁にそういうことがあるわけじゃない。週に一回あればいい方で、むしろキスや抱き合う時間の方が長かった。澪は、そういう触れ合いを求めるタイプだった。

あるとき、ぽろっと本音を漏らしたことがある。元彼は、終わったあとすぐ寝てしまったり、急に冷たくなったりして、それが嫌だったらしい。それで、セックスそのものに少し抵抗が残っているのだと。あのときの澪の顔は、少しだけ寂しそうだった。

そんな澪が、夏休みのあいだだけセクキャバで働くことになった。

理由はいくつかあった。二十歳になって弟も大学生になり、仕送りが止まったこと。生活費を自分でまかなわなければならなくなったこと。そして、もっと大きいのは、元彼との別れ際に起きた事故だった。

ファミレスで別れ話をしたとき、相手は平然とビールを頼んだらしい。酔ったままの元彼の車を、澪が代わりに運転してしまった。バックのときに電柱へぶつけ、慌てて踏み込んだアクセルで車はさらに壊れた。しかも保険は家族限定。結局、修理代の請求だけが澪の元へ届いた。

「もう……デリヘルとかで稼ぐしかないかな」

その言葉を聞いたとき、俺は本気で焦った。

「俺も貯金で手伝う。だから、風俗はやめてくれ」

「嫌だけど……隼人が嫌なら、別れても……」

「そんな修理代で別れるわけないだろ」

軽く言ったつもりではない。けれど、俺にできることは多くなかった。二人でいろいろ考えて、キャバクラという選択肢も出た。でも、人見知りの澪が、夏休みだけで指名を取って稼ぐのは現実的じゃない。悩んだ末に残ったのが、セクキャバだった。

「やっぱり風俗しかないかなぁ……」

泣きながら求人サイトを見ている澪を見て、胸が苦しくなった。俺もできる範囲で助けるつもりだったが、たかが知れている。現実は、思ったよりずっと重かった。

澪が面接に行った店は、系列店の中でも混んでいて稼ぎやすい方らしかった。人手が足りない時期で、すぐ採用になったという。俺はセクキャバの仕組みなんて何も知らなかったが、少なくとも、キャバクラほど会話力を求められず、アフターや連絡先交換もなく、ヘルスほど踏み込んだこともしないらしい。澪には、その曖昧さがちょうどいいのかもしれなかった。

ただ、澪が働く店の名前だけは教えてくれなかった。知りたくない気持ちと、知りたい気持ちが、同じくらい強かった。結局、俺は澪のスマホを少しだけ覗いて、店を知ってしまった。

調べてみると、最初の印象は妙に生々しかった。

制服姿で密着して接客する。澪の制服姿を見てみたい。フレンチキスやディープキスもある。そこは正直、嫌だった。ダウンタイムのあいだは上半身を脱ぐ。十分だけなら……と、妙な納得をしてしまう。乳首を舐めるサービスもある。さすがにそれは嫌だ。そして、抜きはない。風俗店ではないのだから、そこは当たり前だ。

本音を言えば、嫌だった。嫌に決まっている。でも、澪は真面目すぎるくらい真面目で、自分がやると決めたことには責任を感じてしまう。止めたいのに、止める言葉が見つからなかった。

働き始めて一週間ほどで、思った以上に稼げているようだった。仕事の話はあまりしないが、会話の端々から店の名前が漏れることがある。本人は気づいていないのかもしれない。うがい薬や胸の消毒もしているらしいし、精神的にしんどくならないよう、コンタクトを外して視界を少しぼかしているとも聞いた。

勤務は夕方六時から深夜零時まで。週四日か五日。残りの日は、もともと働いていたコンビニに入る。夏休みなのに、ほとんど休みがない。昼はコンビニ、夜はセクキャバの日もある。そんな生活をしているのに、澪は弱音をあまり吐かなかった。

連絡は毎日取っていた。けれど会える日は少ない。そのぶん、たまに会えたときに甘えてくる澪が、たまらなく愛おしかった。

三週間ほど経ったころだったと思う。澪は「乳首が痛い」と言っていて、そのあいだはセックスもしていなかった。俺はその日、先輩に誘われて夕方から居酒屋にいた。二軒目に行く流れになっていたが、正直、これ以上お金を使いたくない。適当な理由をつけて先輩たちと別れ、ひとりで駅へ向かった。

繁華街を抜けて家へ帰る途中、ふと足が止まった。

二十時半。澪が働いている時間だ。

酔いもあって、妙に気になった。行けば驚くだろうか。俺が店を知っているとは思っていないはずだ。どうせなら顔を見て、少し休ませてやれたらいい。そんな軽い気持ちで、気づけば俺は切符を買い、澪の働く街へ向かっていた。

ナビを頼りにたどり着いた先は、客引きの声が飛び交う雑多な通りの地下だった。ボーイが元気よく迎えてくれて、指名用のパネルを見せられる。でも、澪の姿はない。

「澪ちゃんっています?」

「あー、澪ちゃんご指名ですか。もう次も指名が入ってるんで、延長はできないんですよ。他にもいい子いますよ?」

六十分で一万円。高いのか安いのか、もう感覚が分からない。それでも帰る気にはなれず、イベントで混んでいるせいか、少し待たされてからフリーで入ることになった。

カーテン越しに見えた店内は、思っていたよりずっと薄暗かった。爪の確認をされ、問題なしと判断されると、担当の女の子が迎えに来た。

「彩花です。よろしくお願いします」

小柄で、可愛らしい子だった。澪が働いている店だから、ある程度は覚悟していたつもりだったのに、思った以上に可愛い。

制服は制服でも、かなり際どい。歩けば見えそうな短いスカート。透け感のあるセーラー服。胸元は浅く、肌の気配が妙に近い。澪より少し小さめの胸に、澪より少し大きく見える輪郭が浮かんでいた。

手をつないで席へ入ると、店内は想像より狭く、同じ向きにソファとテーブルが並んでいた。すでに女の子と密着している客もいる。膝の上に座らせている男もいた。俺の知っている飲み屋とは、完全に別の世界だった。

席につくと、まずビールを頼んだ。

「失礼します♡」

彩花は左足を俺の脚の間へ絡め、ぴたりと寄ってきた。腕を回さないと失礼な気がするし、支えないとバランスが悪そうにも見える。こういう店なのだと、頭では理解しているつもりでも、身体はずっと落ち着かなかった。

正面の席では、薄くなった頭頂部にカラーボールの光が反射して、妙に目を引く客がいた。思わず笑いそうになる。彩花もそれに気づいたのか、唇が触れそうな距離で小さく注意してきた。

「笑ったらダメだよ……」

「彩花ちゃんも笑ってるじゃん」

「だって、さっきから変なんだもん」

「それ以上は言ったらダメぇ……っ」

次の瞬間、口を塞ぐようにキスをされた。舌が絡んだところでビールが運ばれてきて、変に気まずい。

「おっぱい触って?」

そう言われるまま手を伸ばすと、彩花は満足そうに笑った。正面の客は、頭皮の光を気にしているのか、汗をかいているのか、やたらと必死だった。その必死さが逆におかしい。けれど、彩花とじゃれ合っているうちに、そんなこともどうでもよくなってくる。

「私たちもキスしよ? 上に乗っちゃうね」

彩花は澪とは違う種類の可愛さだった。少しあざとくて、でも嫌味がない。笑いながら、自然に距離を詰めてくる。

「笑ってるのに、ちゃんと硬くなってるよ〜。なんでかなぁ?」

腰を押し当てられ、もう何が何だか分からなくなる。頬を寄せて抱きついてきたかと思うと、次は「そろそろダウンタイムだよ」と耳元で囁かれた。店内にはBGMが流れ、ボーイの声がそれに重なる。

周囲を見ると、女の子たちはみな客の上に乗っていた。向かいの男も、名残惜しそうにキスをやめ、相手を抱き寄せている。薄暗いのに、どこか必死で、どこか滑稽で、でも目を離せない。

カラーボールが止まり、少しだけ店内が暗くなった。音楽のノリも変わる。

「ダウンタイムだから脱がせて♡」

彩花は上着を脱がせると、腰を揺らしながら俺の前に身を預けてきた。形式上は偶然を装っているのかもしれないが、そんなことを考える余裕はなかった。

そのとき、正面の席から澪の声が聞こえた。

ああ、いる。

見えたわけじゃない。けれど、あの声は間違いなく澪だった。薄暗い店内で、コンタクトを外している澪に、俺の顔がはっきり見えるはずがない。そう思うと、少しだけ救われた。

しばらくして、ボーイの声が響いた。

「ハッスルタイム、スタート!」

彩花は椅子の上に立ち上がり、そのままスカートを脱いだ。後ろを向いて、Tバックのまま身体を突き出してくる。椅子の上は危ないから気をつけて、と言われていたが、そんなことを気にする余裕はもうなかった。

「こういうの、ダメな人?」

「いや、別に……」

「なら良かった♡」

彩花は肘掛けに頭を乗せ、脚を開いて寝転んだ。「転んじゃったぁ」と笑う声が妙に軽い。隣の席でも、澪が同じようにしているらしかった。すでに客が澪の上に乗っている気配がする。

彩花は再び俺に抱きつき、キスをねだる。俺はそれに応えながら、意識のどこかで澪の方を探していた。

「おまんこ触って欲しいな♡」

そう囁かれて、指を伸ばす。激しくはできない。手を押さえられているからだ。それでも、ぬくもりや湿り気が伝わってくる。彩花は慣れた様子で、終わるたびに泡で乳首を拭いていた。あまりに手際がよくて、妙に現実味があった。

そして、ラストの合図が流れた。

「残り時間わずか! 最後は花びら大回転!」

彩花はTバックを脱いで、俺に預けてきた。

「預かっててね」

その瞬間、ようやく、澪が俺に店の名前を教えなかった理由が少しだけ分かった気がした。見たくないものを、見てしまうからだ。

「見えなーい! こっちで合ってる〜?」

向かいから、澪が来た。

おっぱいも、陰毛も、隠す気がない。俺は咄嗟に俯いた。澪は流れ作業みたいに跨ってきて、すぐにキスをした。さっき彩花が乳首を拭いていたのは、このためだったのだろう。俺に舐められていることにも気づかないまま、澪は甘い声を漏らしている。

手を導かれるまま、澪の身体に触れた。いつものように、驚くほど濡れていた。ほんの十数秒だったと思う。澪は乳首を軽く拭き、次の客へと流れていく。

俺のことなど、見えていないのかもしれない。そう思うと、少し切なかった。

やがて場内がひと区切りつき、彩花が戻ってきた。澪は、どうやら一番濡れていたらしい。

「パンツ履かせてー」

音楽が戻り、俺は彩花に服を着せる。すると彩花が、悪戯っぽく笑った。

「澪ちゃんのパンツ、びしょびしょだよ?」

「……ビショビショにしたの、だれぇ〜?」

そこで、さっきの客は時間切れで帰っていった。彩花も一度席を外したが、場内指名が五百円だと聞いて、もう少し残ってもらうことにした。

「指名ありがとう! ここ、お客さんの年齢層高いから、お兄さん、女の子から人気あったよ?」

「また一から仲良くなるの、面倒だし」

「私がよかったからじゃないんだぁ?」

何も言えなかった。彩花はそんな俺の反応を楽しむように、また跨ってきて、太ももでゆっくりと擦りながらニヤニヤしていた。

その夜、俺は澪の仕事をちゃんと見た。見たくなかったはずなのに、見てしまった。真面目で、無理をして、それでも笑って客に向き合う澪の姿は、思っていた以上にまぶしかった。

そして同時に、俺は理解した。あの子は、ただ軽い気持ちでそこに立っているわけじゃない。守りたいものがあって、耐えているのだと。

帰り道、胸の奥に残ったのは、欲望よりも先に、妙な痛みだった。澪は俺の知らない顔で働いていて、俺はその一部を見てしまった。恋人でいるというのは、甘いだけじゃない。見たくない現実まで引き受けることなのかもしれない。

それでも、俺は澪を嫌いにはなれなかった。むしろ、前より少しだけ、強く抱きしめたくなっていた。

揺れる夜のあとで

澪がセクキャバで働くことになったのは、軽い気持ちではなく、逃げ場のない事情が重なった結果だった。修理代、生活費、家族の事情。どれも簡単には片づかない。

俺は店の中で、澪の真面目さと、無理をしてでも笑う強さを見た。知らない方が楽だったのかもしれない。でも、知ってしまったからこそ、これから先の澪をもっと大事にしたいと思った。

恋人の仕事を受け止めるのは、綺麗ごとでは済まない。けれど、目をそらさずに隣に立つことはできる。あの夜、俺はそう思った。

澪は、まだ夏休みのあいだだけ働いている。俺はその先を、ちゃんと一緒に考えていきたい。

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