R18短編小説

生徒と噂になったレッスンプロ、恋人デートへ

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執筆:編集部(原記事に基づく再編集) 編集部による品質基準審査済み
生徒と噂になったレッスンプロ、恋人デートへ

自分は、都内の一等地にある一軒家でレッスンをしている。ゴルフを教えるのが本業だが、客との距離感が妙に近いせいか、いつの間にか変な噂まで立つようになった。結果は出している。だからこそ、嫉妬も好奇の目も向いてくる。

「ねぇ、あなた。ゴルフ教えてるついでに、変なことしてるって本当?」

その日、自分は断りきれない上客である優子の誕生日会に呼ばれていた。会はもう終わりかけで、みんなそれぞれ知り合い同士で固まっている。自分と、そこにいたサヤだけが輪の外に残り、気づけば部屋の隅で向かい合っていた。

サヤは、優子から何かしらの噂を聞いてきたらしい。視線は鋭いのに、どこか面白がっているようでもあった。

「優子さん、本当に上手くなりましたよね。聞きましたよ、この間、80台が出たって」

「知ってるわよ。一緒にゴルフしてたから」

少しむっとしているようにも見える。優子に対する対抗心があるのかもしれない。そう思った。

「ゴルフ始めて、どのくらいですか?」

「丸二年かな」

「スコアは?」

「だいたい100くらい」

「そうですか。お名前は?」

「サヤ。岡田紗佳に似てるって言われる」

自分は、少しだけ笑った。サヤは続けた。

「私、ゴルフにハマってる人の手を見ると、なんとなくアドバイスできるかもしれません。手、見せてもらえます?」

「そう言って、セクハラするんでしょ?」

「別に、優子さんに勝とうとか、そういうのじゃないから」

言い返したくなる気持ちもあったが、相手するのが面倒になって、携帯を開いた。明日の来客の練習メニューを確認する。すると、サヤが画面を覗き込んできた。

「ちょっと何それ? 明日の予定?」

「はい」

「結構お客入ってるわね。それ、練習メニュー?」

「ええ、真面目にやってますから」

「エッチなサービスないと、レッスン受けられないんでしょ?」

サヤは、そういう噂を半分信じているのか、からかっているのか、判別しづらかった。ただ、彼女の目は本気でゴルフを上手くなりたい人のそれでもあった。

「ゴルフも、一回やり始めたら、納得するレベルまで上手くなりたいって思いますよね」

「だめなの?」

「あいにく、お客様、一杯でして」

本音を言えば、休日を削れば一人くらいはねじ込めた。だが、ただのレッスンだけでは、正直なところ割に合わない。サヤはかなりスタイルが良く、香水の匂いも強くて、近くにいるだけで妙に意識してしまう。

そのとき、サヤが自分の手を取ってきた。見てくれ、ということだろう。

「ああ、サヤさん、かなり練習してますね。ただ、クラブの握り方が少し良くないかもしれません」

「……」

「ボール、左に曲がりませんか?」

「……確かに」

「っていう具合に、真面目にやってますから」

少しだけ、主導権を取り返せた気がした。

そこへ、酔いの回った優子がやってきた。

「コーチ! サヤもゴルフ上手くなりたいって言ってたから、よろしくね!」

「優子さん、ありがとうございます」

優子は満足そうに笑うと、また別のテーブルへ戻っていった。

「優子さん、ああ言ってるけど?」

「無理です」

「優子さんに、断られたってチクろうかな?」

「……条件があります」

「エッチなやつでしょ?」

「はい。サヤさんがベストスコアを更新したら、恋人デートして下さい」

サヤは、呆れたように笑った。

「ほら、そういうことでしょ?」

「さっきから、サヤさんの香水の匂い、すごく良くて。サヤさんもスタイル良いし……はっきり言って、惚れそうです」

自分でも少し大胆すぎると思った。けれど、口にした瞬間、妙に気持ちが定まった。

「私にチャンスを下さい」

「どうしても?」

「どうしても!」

「……はぁ、わかったわ。ベストスコア更新したら、考えるわよ」

「よっしゃ」

「あと、私が課す練習メニューは必ずやって頂きます。あと、質問には素直に答えてください」

「考えるだけよ。デートするとは言っていないから」

それでも、連絡先は交換できた。飲み会が終わるのを待つあいだ、二人の間には妙な緊張感が残っていた。

それからサヤは、自分の貴重な週一回の休みに合わせて来るようになった。

「サヤさん、握り方はこっちに変えましょう」

「……はい」

一応、練習に来れば話は素直に聞く。だが、近くに立つたびに香水の匂いがふわりと来る。集中したいのに、頭のどこかが落ち着かない。

「サヤさん、ゴルフの後半に左に行くのは……」

「へぇ……私、逆だと思ってた」

「力が入り過ぎて、ボールが左に飛んでいくのかと思った」

「結構、真逆のこと考えてることが多いんです」

「やはり、スムーズに振って、真っすぐ行くようにするとゴルフがもっと楽しくなりますよ」

「うーん、それっぽいこと言うわね」

「……あの、一応プロですから」

「それと、いつも私が来るとき、ほかのお客がいないのは、私のこと狙ってるから? そういうの辞めてね」

「いえ、自分の休日を返上しているので、他のお客は入れていません」

「……」

「あの……香水、いつも香りが良くて。ちょっとその気になりそうなので、控えて頂くことは可能でしょうか?」

「そんなに良い匂い?」

「はい。自分も汗が気になるので、おすすめのものがあったら教えてほしいです」

「私、そういう会社やってるから、いくらでも知ってるわ」

「なるほど、納得いきました!」

サヤは、男性につけてほしい香水の話までしてきた。自分は、彼女が好きな匂いに合わせるつもりでいた。

「それとゴルフクラブですが、少し買い直しませんか? 特にドライバーは、左にいかないような難しいモデルを使っているので、変えたほうが良いかもしれません」

「知り合いにゴルフクラブを売ってるやつがいるので、安く手に入りますよ?」

「なんか、だんだんあなたのペースになっていくのが納得いかないけど、いいわ。付き合ってあげる」

その日は、練習のあとに香水とゴルフクラブを買いに、サヤと出かけた。これをデートと呼んでいいのか、まだ自信はなかった。

優子とサヤは、ちょくちょくゴルフに行っているらしかった。あるとき、優子から連絡が入る。

「コーチ、サヤ、すげー上手くなってるじゃん?」

「サヤとエッチしたの? え? どうなのよ?」

「してませんよ」

「してるなら言ってよ。サヤは親友だからさ。邪魔したくないから」

自分は、思わずため息をついた。

思い返すと、サヤに教え始めて三か月ほどで、他の客からセックスを求められる回数は極端に減り、ついにはなくなっていた。妙な静けさだった。だが、それはそれで、サヤとのやり取りが日常を占めるようになっていた。

「サヤ、もう、毎回余裕で80台出てるよ」

「……」

完璧にベストスコアを更新している。約束では、更新したら恋人デートを考えてくれるはずだった。だが、サヤは何も言わない。

うまくいっているのに、なぜか胸の奥がざわついた。自分は男として見られていないのかもしれない。そんな不安が、じわじわと広がっていった。

次のレッスンの日、思い切って切り出した。

「サヤさん、優子さんから聞いたのですが、もう80台が出てるそうじゃないですか……」

「……」

「言って下さいよ。練習の内容も変わってくるんですから。今日からボールを左右に曲げる練習しましょう!」

その夜、珍しくサヤからメールが届いた。

「ごめんなさい、ベストスコア隠してました。恋人デートがちょっと怖くて……」

画面を見つめたまま、しばらく動けなかった。

「全然OKです。ベストスコア、本当におめでとうございます!」

すぐに返した。嬉しかった。隠されていたことより、ちゃんと打ち明けてくれたことのほうが、よほど大きかった。

「こんなに早く、ベストスコアが出るとは思わなくて……」

「やっぱり他の女の子と遊んでる人とデートするのは、正直……気が進まないんだよね」

その文を読んで、自分は少し笑ってしまった。図星だったからではない。サヤが本気で悩んでいるのが伝わったからだ。

「そうですよね。そうだと思います。メールで失礼かもしれませんが、僕、サヤさんのこと好きでした。久々に本当に好きな人ができて幸せでした」

送信したあと、胸が少し軽くなった。

「ごめんなさい」

返ってきた言葉は短かった。けれど、その短さが逆に、もう逃げないという意思にも見えた。

次のレッスンの日。

「それでは、いつも通り練習始めていきましょう」

「はい」

「マミさん、上手くなったので、反復練習をとにかく続けましょう」

この頃には、サヤの名前を口にするたび、少しだけ距離の近い空気が流れるようになっていた。香水の匂いは前ほど強くない。代わりに、練習で汗をかいたあとの、少し生々しい匂いがする。

その匂いに、どうしても意識が持っていかれる。だから自分は、少し距離を取った。

「この前、メールで傷つけたかもしれない。ごめんなさい」

「あ、いえいえ、とんでもないです。そんな」

「なんか、今日、距離取られるって感じがして」

「いや、マミさんの汗の匂い、嗅ぐとちょっと興奮してしまって……ごめんなさい、変態ですね。忘れてください」

「あ、あ、あのさ、恋人デートじゃなくて、普通の食事に行かない?」

「もう無理です。マミさんのこと好きだから、行くなら恋人デートにして下さい!」

「どうしても?」

「どうしてもです!」

「……もう」

その一言で、何かが決まった気がした。

その日、サヤと夕方からデートすることになった。ゴルフウェアを見て回り、そのあと食事をする流れだ。

「色々なブランドから、ゴルフウェア出すようになったよね」

「確かに。スポーツブランド以外からも出してきて、本当におしゃれになったよ。僕は苦手だけどね」

「そう、じゃあ私が選んであげる!!」

「ガチで嬉しいです。ありがとうございます!」

サヤは自分で選んだものを買い、自分はサヤが選んでくれたものを買った。どちらも妙に似合っていて、少しだけ笑ってしまう。

食事は個室のステーキ店だった。赤ワインが進むにつれて、二人とも少しずつ酔っていく。

「私のこと好きって言ってたけど、好きになってから、どんだけの人とイチャイチャしたの?」

「いや、正直、誰ともイチャイチャしてないんですよね。求められることもなかったですし、もちろん求めることもなかったですよ」

「えー、本当に?」

「だから、本当に好きなんだってば」

「本当に?」

「こう言える立場じゃないですけど、マミさんに嘘はつきません!」

サヤは、しばらく黙っていた。やがて、ふっと表情を緩める。

「わかった、わかった。本気で恋人デートするわ!」

「よっしゃ!」

店を出ると、サヤは自然に腕を組んできた。平日のレストラン街は空いていて、エレベーターが来るのを二人で待つ時間さえ、妙に甘かった。

サヤが、耳元で囁く。

「ねぇ、好きって言って」

「好き。ガチで好き」

「私も好き」

エレベーターに乗ると、ほかに誰もいない。扉が閉まった瞬間、空気が変わった。

「ねぇ、もっと好きなら好きって言って」

「サヤ、好き」

目が合う。次の瞬間、唇が触れた。

「チュ、ん……」

サヤとキスができた。心臓が一気に跳ねる。こんなふうに、相手の体温をまっすぐ受け止めるのは久しぶりだった。

サヤが突然、エレベーターの階数ボタンを押した。

「?」

「この階でちょっと降りよ?」

腕を組んだまま、サヤが行きたい方向へ歩いていく。

「あ、あそこ、あそこ」

たどり着いたのは、女性のランジェリーショップだった。

「ここは、ちょっと、入れないよ」

「ねぇ、カズキはどういうのが好き?」

「……」

「今履いてるの、地味かも。カズキ喜んでくれないかも」

そう言うと、サヤは軽く笑って、店の中へ消えていった。

小声で「せっかくだから、エロいの買ってくるね!」と告げられ、自分は慌てて駅近くのホテルを予約した。

しばらくして戻ってきたサヤは、少し頬を赤くしていた。

「お待たせ! もう買ったの着てるからね!」

「……」

「?」

「ねぇ、ホテル行きたい」

「……うん」

ホテルに着くまでの間、二人は何度もキスをした。エレベーターの中でも、息が詰まるほど近かった。

「はぁ、はあ、カズキ、好き、チュ」

「サヤ……好き」

部屋に入るなり、自分はサヤをベッドへ仰向けにした。

「シャワー、浴びないの?」

「その前にイチャイチャしたい」

言葉にすると、もう止まらなかった。仰向けになったサヤに深く口づける。舌が絡むたび、彼女の呼吸が乱れるのがわかった。

「チュ、え、エロい……ね」

服の上から、サヤの胸を抱くように触れる。柔らかくて、熱がある。

「サヤの胸、柔らかい」

「あっ! う、うん、ありがとう」

深いキスと、触れ合う体温に酔うようだった。

「ちょ、ちょっと潜っちゃダメ!」

「あ、うん! くっ! シャワー浴びてからって! あっ! アン、そんな、あっ!」

サヤのロングスカートの内側へ顔をうずめると、彼女は戸惑いながらも、次第に声を漏らした。先ほど買った下着の上から、丁寧に、ゆっくりと愛撫する。

「汚れちゃうよ」

そう言いながらも、サヤは自分を止めなかった。

下着を外すと、そこには、ずっと見たかったものがあった。感動に近い熱が胸の奥から込み上げる。

「舐めるね」

「ね、ね! シャワー浴びてから、ちょっと汚いって! あっ! くっ! 舌入れちゃダメだって……」

「あ! そこっ! 気持ちい!! はぁはぁ、もっと、舐めて」

サヤの声が、部屋の空気を震わせた。レッスンのときの強気な顔とは違う、素直で、熱っぽい顔だった。自分はその変化に、どうしようもなく惹かれていた。

夜は、まだ始まったばかりだった。

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