私の名はサトシ、45歳。少し前、会社の後輩であるマモルに勧められて、マッチングアプリを始めた。もちろん、最初から下心がなかったわけじゃない。若い相手は気後れするし、金を求められることも多いから、狙いは40代前後に絞った。それでも、実際に会えた相手はまだ三人だけ。思った以上に手間も時間もかかった。
そんなある日、休憩中のマモルが、スマホをこちらに向けてきた。
「この人、サトシさんの奥さんに似てません?」
画面には、顔の半分が隠れた女性の写真があった。けれど、私は一目で分かった。妻のミユキだ。けれど、その場では平静を装って、「どうだろうな。これだけじゃ分からない」とだけ返した。
胸の奥が、じわりと熱くなる。嫌な予感と、見てはいけないものを見てしまった感覚が、同時に押し寄せてきた。
家に戻ってから、私はすぐにアプリを開いた。さっきの女性を探すと、すぐに見つかった。別の全身写真も載っていて、着ている服に見覚えがある。間違いない、ミユキだ。プロフィールを見ると、始めたのは三か月ほど前。しかも、自己紹介には「エッチ目的」「セフレを探している」とはっきり書かれていた。
ミユキは42歳。胸はFカップで、少し下がり始めてはいるものの、細身でスタイルは悪くない。もともと性に対しては積極的なほうだったが、ここ最近は回数が月に一度ほどに減っていた。その不満が、こういう形で外に向いたのかもしれない。そう考えると、責める資格は自分にもない。私だって同じように、アプリで相手を探していたのだから。
ただ、納得したつもりでも、気持ちはすぐには追いつかなかった。モヤモヤが残る。平日の昼間、ミユキはパートに出ている。それ以外の時間、何をしているのか、私には分からない。
翌日、休憩時間にマモルへ話を振ると、彼は少し興奮した様子でうなずいた。
「やっぱり奥さんかもしれないですね」
「数回しか会ったことはないけど、きれいな人だと思って覚えてました」
「でも、向こうも俺に気づいてるかもしれないよな」
「顔をぼかした写真しか載せてないなら、大丈夫じゃないですか」
そこで私は、ある提案をした。
「マモルからメッセージを送ってみないか」
彼はあっさり引き受けた。むしろ面白がっているようだった。
「いいですよ。ただ、トントン拍子に進んだら、奥さんと本当に会うことになりますけど、それでもいいんですか?」
「それも面白いかもしれない。やりとりは全部教えてくれ」
「分かりました。じゃあ送ります」
それから数日、私は毎日のようにマモルから進捗を聞いた。やりとりは驚くほど順調で、ついには会う約束まで決まってしまった。会う前に、顔がはっきり分かる写真を見せてほしいと言われたらしく、マモルはミユキにそれを送った。すると、ミユキのほうからも写真が返ってきた。マスク越しでも、明らかに彼女だと分かる。
しかも、そこに添えられていたメッセージの内容が、私をさらに驚かせた。
「もし会う気持ちが変わらなければ、おちんちんの写真も送ってくれませんか。納得できる方と楽しみたいので。そうしたら私も送ります」
ミユキが、こんなやりとりをしている。それだけで、頭の中が少し白くなった。私は自分のことを棚に上げているが、正直に言えば、短小包茎だ。だからこそ、相手には大きなものを求める。マモルとは温泉に行ったことがあり、彼のものが大きいのは知っていた。逆に、彼も私の小ささを知っている。
「送っていいですか?」とマモルが聞いてきた。
「いいよ」
その翌日、彼は小さく息を弾ませながら画面を見せてきた。
「来ましたよ」
そこにあったのは、見慣れた大きな胸だった。Fカップの丸み。少し大きめの乳輪。服越しでも分かる柔らかさ。私は言葉を失った。
「奥さん、こんなに胸が大きいんですね。俺のもオッケーって言ってもらえました」
数日後、二人が会ったときの話を、マモルは細かく語った。会うなりそのままホテルへ入り、部屋に着くと、ミユキのほうから「シャワー浴びよう」と言って、先に服を脱いだという。
シャワーの中で互いの体を洗い合い、そのまま一度。ベッドに戻ってもう一度。少し休んで、さらにもう一度。合計三回だったそうだ。最近の私は一回で終わることが多いから、その勢いに妙な敗北感を覚えた。
しかも、ミユキは終始かなり積極的だったらしい。喘ぎ声も大きく、マモルいわく、相当楽しんでいたとのことだった。
その二週間後にも会うと聞き、私は動画を撮ってくれるよう頼んだ。固定したスマホで撮った映像は、画面の角度が偏っていて綺麗とは言えなかったが、二人が絡み合っている様子は十分に分かった。聞き慣れないほど大きな声も、はっきり入っていた。
「こんなこと言うのも変ですが、かなり激しいですよ。奥さんが他の男とこういうふうにしてるのを見るのって、どうなんですか?」
「良い気分じゃない。ただ、今度はお前の家に誘ってみてくれ。生で見たい」
ミユキは意外にも、あっさり承諾したらしい。
当日、私は少し早めにマモルのマンションへ向かった。彼は高級そうなマンションで一人暮らしをしている。私は最初、隣の部屋の陰に身を潜め、二人が入室したあと、ドアの隙間から様子を見るつもりだった。
廊下に出ると、部屋の中から会話が漏れてきた。
「シャワー、浴びますか?」
「もう浴びてきたから大丈夫」
少しして、くぐもった声が聞こえ始めた。私は慌ててスマホを構えた。
二人はキスしながら抱き合っている。マモルがミユキの胸を揉み、服を脱がせていく。やがて、下着姿になったミユキの姿が見えた。見たことのない、かなり透ける素材の下着だった。
「すごくエッチな下着ですね。乳首も、下の毛も透けてます」
「恥ずかしい。あんまり見ないで」
そのあと下着も外されると、ミユキの陰部は小さく整えられていた。以前はもっと自然なままだったはずだ。
「あれ、下の毛、整えたんですか?」
「うん。ちょっとやってみた。変かな」
「全然。きれいですよ。旦那さんは知ってるんですか?」
「知らないと思う。まだ見せてないから」
マモルは胸を揉み続け、ミユキは彼の下半身を手で扱いていた。私はそのとき、彼のものを初めてはっきり見た。私よりずっと大きい。比べるまでもなかった。
やがてミユキは膝をつき、口で愛撫を始めた。先端を舐め、筋を舐め、玉まで丁寧に口に含む。水音が部屋に響く。私は息を呑んだまま、その光景を見ていた。
ベッドへ移ると、彼女はさらに熱を帯びていった。仰向けのマモルの間に入り、夢中で口を使う。そこまでは、まだ私の知るミユキの延長線上だった。
だが、次の場面で少しだけ空気が変わった。
マモルをうつ伏せにさせ、尻を上げさせたミユキは、後ろから手を伸ばして彼を扱きながら、別の場所にも唇を寄せていく。マモルが声を漏らした。
「それ、気持ちいいの?」
「なんか新しい感じ。悪くないよ」
「こういうの、いつもやるの?」
「いや、気持ちいいって聞いたから」
「俺以外にも、こういう相手いるの?」
「え、秘密」
その言葉に、私は妙にざらついた感覚を覚えた。秘密。ミユキは、私が知らない場所で、もっと別の顔を持っているのかもしれない。
今度は彼女が仰向けになり、マモルがその間で顔を埋めた。ミユキは自分で胸を弄りながら、背中を反らせている。
「もう入れていい? 我慢できない」
「いいよ」
マモルが仰向けに寝ると、その上にミユキが跨った。ゆっくりと腰を沈め、深く受け入れていく。
「大きい……」
ミユキはそう漏らしながら、腰を振り始めた。途中からは左手で胸を、右手で自分の中心を弄っているように見えた。
「すごい……」
彼女は自分の胸を持ち上げ、乳首を舐め始めた。私は思わず目を見開いた。
「自分でそこまでできるんですね。よくやるんですか?」
「一人のときはね。垂れてきたから、できるだけ」
「一人でどのくらいやってるんです?」
「それは秘密」
やがて体勢が変わり、マモルが激しく動くと、ミユキの声はさらに大きくなった。
「もっと……もっと……」
「だめ。気持ちよすぎて、もう無理」
しばらく続いたあと、彼は彼女のお腹の上に果てた。二人はしばらく横になっていたが、すぐにまた熱を取り戻す。
「シャワー、浴びますか?」
「まだ。もう一回やりたい」
「じゃあ、もう少し休んでから」
「早く戻るようにして」
ミユキは胸で彼を挟み、上下に動かしていた。
「こんな胸でやってもらうの、初めてですよ。気持ちいい。旦那さんがうらやましいな」
「旦那とは、こんなことしないよ」
「もったいないですね。もう復活しました」
「じゃあ、後ろからお願い」
ミユキは尻を突き出した。マモルがそこへ入り、前後に動くたびに、彼女は短く鋭い声を漏らす。
私は自分の小ささを、あらためて思い知らされた。私とは違う。私の相手では、こういう激しさにはならない。
ミユキはやがてベッドに上半身を預けるようになり、そのまま声を重ねていった。最後までいくと、彼女は息を切らしながら「気持ちいい」と呟いた。
「オレも気持ちいいです。シャワー浴びますか?」
「借りてもいいかな」
シャワーから戻ったミユキは、下着だけを身につけていた。透ける生地の、かなり大胆なものだった。
「本当にエッチな体ですね。胸も大きいし」
「おばさん相手にそんなお世辞いらないよ」
「そんな下着、自信がないと着られないですよ」
たしかに、ほとんどシースルーで、胸も下も隠し切れていなかった。家では見たことのない種類だった。
「でも、あなたのおちんちんも相当すごいよね」
「ありがとうございます」
やがてミユキが帰り、マモルが戻ってきた。
「サトシさん、俺、やりすぎましたかね」
「いや。いいものを見せてもらった」
「ちょっと心配で。これからどうします? 終わりにします?」
「何か連絡があったら教えてくれ」
その夜、家に戻ると、ミユキは何事もなかったような顔をしていた。いつも通りの食卓、いつも通りの会話。けれど、その平静の裏で、何かが確かに変わってしまった気がした。
そして後日、ミユキとマモルの連絡は、まだ続いていると知る。彼は私に、彼女の細かな癖や習慣まで仕入れてきた。オナニーの頻度、持っている道具、アプリを始めた時期。知りたくなかったはずなのに、私はその一つ一つを、妙に冷静に受け止めていた。
たぶん私は、怒っていた。けれど同時に、どこかで見たくもあったのだと思う。自分の知らない妻の姿を。手の届かないところで熱を持つ、もう一人のミユキを。
その気持ちに、まだはっきりした名前はついていない。だが、あの夜から、私の中の何かは確実に変わった。