あの日から、少しだけ時間が空いた。
二週間。たったそれだけのはずなのに、会えないあいだの私はずっと落ち着かなかった。仕事をしていても、ふとした瞬間に思い出してしまう。颯真さんの声、あの目つき、触れられた時の熱。身体の奥に残った感覚は、簡単には消えてくれなかった。
週末、私たちはまたホテルで会うことになった。二度目の夜だった。
扉を開けた瞬間、颯真さんはいつもの調子で笑った。軽い口調なのに、目だけは妙に真剣で、私の顔を見た途端に少しだけ熱を帯びる。そういうところが、ずるい。
「また華さんに会えるなんて、ほんと楽しみだった」
「……私も、です」
声にすると、気持ちまで露わになる気がして恥ずかしい。それでも、私は逃げなかった。むしろ、会えなかったあいだに募ったものを、どうにかして確かめたかった。
前の週、私は勢いのまま、颯真さんに自分の一人の時間の記録を送ってしまっていた。送信ボタンを押したあと、あまりのことに顔から火が出そうになったけれど、返ってきたのは、驚きと笑いが混じった彼らしい反応だった。
「まさか、あんなものが送られてくるとは思わなかった」
「……ノリ、です。たぶん」
「たぶんって何だよ」
そう笑いながら、彼も自分の姿を返してきた。画面越しでもわかる、妙に整った余裕。なのに、そこには隠しきれない欲もあって、私はそれを見た瞬間から、ずっと身体が落ち着かなかった。
「早く、ちゃんと会ってしたいです」
私がそう言うと、颯真さんは少しだけ目を細めた。
「一週間、ちゃんと我慢できた?」
「……しました。証明はできないですけど、本当です」
「信じる。華さん、嘘つけなそうだし」
その言い方が、妙に優しかった。からかっているようでいて、ちゃんと受け止めてくれている感じがある。私はその空気に、すぐ飲まれてしまう。
「溜めたぶん、燃えるからね。華さんにとっては、ちょっとした地獄だった?」
私は少し視線を落とした。正直に言うしかなかった。
「……地獄、でした。会ってからずっと身体が落ち着かなくて、仕事中も、気がつくと触れたくなってしまって」
颯真さんは、そこでふっと息を吐いた。笑ったようにも見えたし、感心したようにも見えた。
「じゃあ今日は、一緒にほどこう」
その一言で、胸の奥がじわりと熱くなる。私は頷いたあと、思い切って口にした。
「……お尻、使ってもらえませんか」
「前に言ってたやつ?」
「……はい」
「もちろん。むしろ、それも楽しみにしてた」
私は、会う前に公園のトイレで丁寧に身支度を整えてきたことを伝えた。彼は目を見開いて、それから本気で感心したように笑った。
「最高じゃん」
ホテルに入るころには、もう逃げる気持ちはなかった。恥ずかしさは残っているのに、それ以上に、確かめたい気持ちが勝っていた。
颯真さんは、最初から遠慮がなかった。
「今日はさ、華さんと、ちょっと下品なくらい濃いやつがしたい」
「……下品、ですか」
「汗とか、唾液とか、そういうの全部ごちゃ混ぜで、ぐちゃぐちゃになる感じ。華さんって、そういうの似合う」
私は一瞬、言葉を失った。けれど、その言い回しは不思議と嫌ではなかった。むしろ、目をそらしたくなるのに、じっと聞いてしまう。
「……興味は、あります」
「いいの?」
「はい。でも、妥協はしたくないです。お互い、ちゃんと全力で」
颯真さんの表情が、そこで少しだけ変わった。嬉しそうで、頼もしそうで、どこか獲物を見つけたような顔だった。
「最高。そういう華さん、好きだわ」
その夜は長かった。終わったあとも、すぐには眠れなかった。身体の芯に残る熱が、なかなか引かなかったからだ。
二人きりの時間は、何度も何度も重なった。息が上がって、言葉が途切れて、それでも止まらない。汗が頬を伝うたび、シーツが少しずつ湿っていく。部屋の空気は甘く重くなり、窓の外の夜景だけが、やけに静かに光っていた。
颯真さんは、私の反応を見ながら何度も笑った。私はそのたびに、恥ずかしさと快感の境目が曖昧になっていくのを感じていた。
「華さん、ほんとに声がすぐ変わるよね」
「……見ないでください」
「無理。可愛いから」
そんなやり取りを繰り返しているうちに、夜は深くなっていった。気づけば、時計はかなり進んでいて、私たちはくたくたになるまで抱き合っていた。
そして翌日。約束していた複数での顔合わせの日が来た。
喫茶店に入ると、颯真さんの隣には、二人の男性がいた。高林さんと皆川さん。どちらも整った顔立ちで、雰囲気は強め。軽く笑っているのに、目線には妙な圧がある。嫌いではない、と思った。
「高林です。よろしく」
「皆川です。華さん、きれいですね」
私は少しだけ緊張しながら、頭を下げた。
「高梨華です。よろしくお願いします」
颯真さんは、そんな私を見て、少し得意そうに笑った。
「お前ら、華さんを甘く見ないほうがいいよ。見た目よりずっと、芯が強いから」
その言葉が、妙にうれしかった。私はただ黙って、グラスの水面を見つめた。
翌日、私たちは郊外のラブホテルへ向かった。車内の空気は静かで、でもどこか熱っぽい。窓の外を流れる景色を見ながら、私は自分がどこまで踏み込むのか、まだ完全にはわかっていなかった。
それでも、怖さだけではなかった。知らない世界に足を入れるときの、あの変な高揚感があった。
部屋に入ると、四人の距離は一気に縮まった。颯真さんは、私の様子を確かめるように見てから、低い声で言った。
「痛いのは無理しなくていい。でも、雰囲気は楽しめる?」
「……はい。そういうのは、好きです」
高林さんと皆川さんも、私の返事に小さく笑った。緊張はある。でも、そこにあるのは嫌悪ではなかった。
最初は、ただ視線と呼吸が交差するだけだった。近づかれるたびに、肌が少しずつ熱を持っていく。髪を撫でられるだけで、背筋がぞくりと震えた。香りも、体温も、息づかいも、全部が近い。
私は、気づけば受け入れていた。恥ずかしさはあるのに、それを上回る没入感があった。
部屋の空気が、だんだん濃くなる。誰かが笑う。誰かが息を呑む。私はその中心にいて、視線を集めながら、少しずつ自分が変わっていくのを感じていた。
ひとつひとつの触れ方が、やけに鮮明だった。指先の圧、頬にかかる吐息、耳元で落ちる短い言葉。どれも強くて、でも乱暴すぎない。だからこそ、私は深く揺さぶられた。
時間が経つにつれ、私はもう、最初の緊張だけでは立っていられなくなっていた。颯真さんはそれを見抜いていたのか、ふっと笑って私の肩を抱いた。
「もう大丈夫そうだね」
私は、答える代わりに小さく頷いた。
その夜のことは、熱と息と、途切れ途切れの記憶でできている。シーツの擦れる音。窓の向こうに滲む街灯。誰かの低い笑い声。私の名前を呼ぶ声。全部が混ざって、ひとつの長い夜になった。
気がつけば、私はもう以前の私ではなかった。怖がりながらも前へ進み、恥ずかしがりながらも本音を言い、誰かに見られることを受け入れていた。
あの夜を境に、私は颯真さんとの関係を、ただの刺激や遊びとは少し違うものとして意識するようになった。うまく言葉にできない。でも、たしかに心が動いていた。
そして私は、まだ知らない次の夜を、少し楽しみにしていた。
結論:元人妻の私は、颯真さんとの濃い時間を重ねるうちに、恋人として向き合う気持ちをはっきりさせていきました。
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※本記事は成人向けの体験談として再構成しています。18歳未満は対象外です。写真・動画・個人情報の取り扱いは、必ず相手の同意と各サービスの利用規約に従ってください。