前回、彼氏の宏樹の親友であるオギと関係を持った私は、流れのままに「また会おう」と約束してしまった。あのときは勢いに飲まれただけだと思っていたのに、翌月になると、その約束の日はちゃんとやってくる。逃げる理由を探しても、もう遅かった。
正午になる少し前。マンションのドアを開けると、そこに立っていたオギは、妙に明るい声で私を呼んだ。久しぶり、なんて軽く言うその顔は、あの夜の男というより、いつも宏樹の話に混ざっていた「友達」の顔に近い。だからこそ、余計に落ち着かなかった。
「運転、死ぬほど疲れた」
そう言いながら笑うオギは、夜勤明けでそのまま車を飛ばしてきたらしい。住んでいる県からここまで、三時間以上。休みが月に一、二日しかないのに、わざわざ私のために来たのだと思うと、呆れ半分、妙な罪悪感半分だった。
「早く入ってよ」
私は慌てて部屋へ招き入れ、ドアを閉める。会う場所は今回も私の部屋にした。宏樹の家とはそこそこ離れているから、鉢合わせる心配は少ない。それでも職場の知り合いに見られるのは嫌だった。結局、いちばん目立たないのは、私の部屋の前まで来てもらうことだった。
「食いもん買ってきた。あとで食べようぜ」
「ありがと……」
何気ないやり取りなのに、胸の奥がざわつく。前回のことがあったせいで、普通の会話のはずなのに、どこか現実感が薄い。
ワンルームの廊下を抜けると、狭いけれど落ち着いた自分の空間がある。私は扉に手をかけた、その瞬間だった。
「しーほちゃん」
後ろから急に抱きつかれ、胸を強く掴まれる。驚いて声を上げると、オギは最初からその反応を楽しんでいるみたいに笑った。
「このおっぱいのために、今月頑張ってきたんだよね」
「ちょっと、やめてよ」
キスしようと顔を寄せてきたので、私は反射的に顔をそらした。正直に言えば、オギの顔は好みではない。だから唇を重ねるのには、どうしても抵抗がある。酔っていたり、勢いに流されたりした前回とは、気分がまるで違った。
「キスはダメって言ったでしょ」
「えー、いいじゃん」
がっかりしたように言うオギに、私はため息をつく。
「じゃあこっちなら?」
そう言って、彼は私の手を取り、自分の下半身へ導いた。衣服越しに触れた感触は、まだ完全ではないにしても、確かに熱を持っている。
私は少し迷ってから、うなずいた。男の人に体を見られたり触られたりするより、こちらから触るほうが、なぜか気が楽だった。変な感覚だと自分でも思う。でも、キスをされるくらいなら、こっちのほうがまだましだった。
オギのズボンと下着を下ろすと、そこには半ば起きかけたままの硬さがあった。
「ペロ……」
「あ、ちょっと待って」
「なに?」
「もっと、キスするみたいにして。先っぽにチュッてする感じ」
「こんなふう?」
言われるまま、私は先端に軽く唇を当てる。オギはそれだけで妙にうれしそうだった。
「それそれ。もっと竿のほうも」
「チュッ……こう?」
「うん、上手い」
そんなふうにしているうちに、私はだんだん普通の口での刺激へ移っていった。舌を使い、裏側をなぞり、口の中で熱を受け止める。息が少し乱れるたび、オギの声も大きくなる。
「今までで一番うまいかも」
普通なら、比べられているみたいで嫌になるのかもしれない。でも相手は恋人ではない。だから私は、妙な褒め言葉として受け流せた。
「志保ちゃんも、これからこのチンコが自分の中に入るって考えたら、愛おしくなったりする?」
「ほんと、バカだね」
私は返事をせず、そのまま口の動きに集中した。根元まで咥えるように言われたときは苦しかったけれど、できる範囲で何度も往復するうちに、オギの呼吸が荒くなっていくのがわかる。
「ヤバい、一回出していい?」
私は吸う力を少し強めた。
「あ、出る……っ」
口の中に熱いものが流れ込み、思わず息を止める。ようやく離すと、私は廊下の流しまで急いで向かった。ワンルームによくある、細いスペースの簡単な流し台だ。
戻ると、オギはパンツも履かずにベッドのそばで待っていた。
「またお願いしてもいい?」
「はいはい」
私は少しだけため息をつきながら、残ったものをきれいにする。こうなることは最初からわかっていたのに、なぜか毎回、気持ちは追いつかなかった。
「ピンサロで働いてたことある?」
「なにそれ」
「フェラをメインでする店」
「失礼なこと言わないで」
本当は、宏樹に喜んでもらいたくて覚えたことだった。だからこそ、こんなふうにオギに使っていると、胸の奥が少し痛む。褒められているのに、素直に喜べない。そんな矛盾がじわじわ残った。
それでもオギは止まらない。
「もう我慢できない。エッチしよう」
ベッドに誘われ、私はゴムを持ってきたのを確認して少しだけ安心する。ちゃんと用意してあるなら、少なくとも無茶はしないはずだと思ったからだ。
その後、私たちは何度か休憩を挟みながら、長い時間を一緒に過ごした。買ってきてくれた寿司を食べ、少し横になり、また体を重ねる。気づけば夕方になっていた。
三回目のあと、今度は69をしていた。オギの希望だった。私は昔から、男の人に舐められるのがあまり得意ではない。恥ずかしいし、気持ちよさより先に、どうしても意識が散ってしまう。手でされるほうがまだいいし、何なら擦り付けられるほうが落ち着くくらいだった。
「あんまり舐めないでよ」
「だって目の前にあるし」
「そういう問題じゃないって……」
そんなやり取りをしているうちに、オギが急に体を起こした。
「そろそろ入れようか」
彼がコンドームを取り出そうとして、ふと手を止める。
「どうしたの?」
「やばい。ゴム切らしたかも」
その一言で、私は一気に気持ちが冷めた。しかも彼は慌てる様子もなく、まだ続ける気満々でいる。
「ウチのを使う?」
「サイズ合わない」
「じゃあ買ってくる?」
「この辺に薬局ないし、Lサイズなんてどこにでもあるわけじゃないでしょ」
私は恥ずかしさもあって、店でコンドームを買った経験がほとんどない。だから、そういう事情には詳しくなかった。
「最後に口でして終わりにしようよ」
そう言っても、オギは納得しない。
「それよりさ……生で入れちゃダメ?」
「ダメに決まってるでしょ」
「外に出すから」
「外でも危ないでしょ。絶対ダメ」
私はきっぱり断った。なのに、その瞬間、オギの目つきが変わった。
「え、宏樹とも生でしたことないの?」
「ないよ。だから余計にダメ」
すると、彼はさっきまでの数倍の勢いで食い下がってくる。
「もったいないって。生のほうが絶対気持ちいいよ」
「そういう問題じゃないから」
「お願い、ちょっとだけ」
私は押されそうになりながらも、なんとか踏みとどまった。
「生は絶対ダメ。それ以外なら、なんでもしてあげるから」
「なんでも?」
「変なのはなし」
するとオギは、少し考えてから妙な提案をしてきた。
「じゃあ、太ももで挟んでイカせて」
私は言われるまま、ベッドに仰向けになる。足を閉じ、彼のものを太もものあいだに挟ませた。直接ではないのに、限りなく近いところに熱がある。少し怖い。
「大丈夫、絶対当てないから」
そう言いながら動き始めたオギは、私の太ももの感触を楽しんでいるようだった。最初はただの摩擦だったはずなのに、次第にぬめりが増し、いやらしい音が響きはじめる。
『これ、なんだか入れられてるみたい』
そんな考えが頭をよぎった次の瞬間だった。
ズリュッ。
「ちょっと!」
嫌な感触に気づいて、私は声を上げた。次の動きで、さらに距離が縮まる。
「当たってる! やだ、当たってるって!」
「あっ……」
「ゴムつけて!」
「でも……」
彼は言い訳をしながら、なおも腰を動かす。入ってはいない。けれど、ゴムのない熱が、確かにすぐそこまで来ていた。
「志保ちゃんのところ、ぬるぬるで気持ちいい」
「だから、やめてってば……」
「生だと、もっと気持ちいいかも」
その言葉に、私の体は一瞬だけ反応してしまう。ゴム越しとは違う、直接伝わる硬さと熱。確かに、感覚だけなら強くなるのかもしれない。
でも、だからこそ怖かった。気持ちよさより先に、不安が勝つ。私は息を詰めたまま、オギの動きが止まるのを待った。

注意点・失敗例
この体験でいちばん厄介だったのは、最初の「少しだけ」が、いつの間にか境界を曖昧にしていったことだった。はっきり断ったつもりでも、相手が勢いを増すと、気づかないうちに流されてしまう。
それに、ゴムの準備がないまま続けようとするのは、かなり危ない。避妊の話を軽く扱うと、後から不安だけが残る。雰囲気よりも、先に確認すべきことがある。
もうひとつは、相手が親友であっても、恋人との関係とは別だと割り切れない点だ。快楽だけで考えると見落としやすいが、罪悪感や後ろめたさは、終わったあとにじわじわ効いてくる。
参考にするなら、避妊や性感染症予防の基本は、厚生労働省や日本産科婦人科学会の案内がわかりやすい。感覚だけで判断せず、正しい知識を持っておくほうが安心につながる。
参考情報
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